追憶

「Vladimir Horowitz live at Carnegie Hall」というCDのボックスセットがあるのだけれど、一時バカみたいなプレミアがついてて今はそれでも定価の倍くらいの値で落ち着いている。その中のコンサートの一つに明らかに子供と思われる歓声があがっているコンサートがあるのだけれど、そんなのを聴くにつけなんとうらやましいガキだろうと嫉妬したりする。もう今は爺様だろうけれどね。昔はレコードでしか知る由のなかった伝説のピアニストであったし、擦り切れるほど聴いて彼の魔法に取り憑かれた。絶頂期のそれをライブで聴けるのだからそれはそれは目も眩むような感動だろうなぁと想像する。昔テレビでホワイトハウスでのコンサートの様子を観た時でさへ眩暈がしたもの。

それでも晩年にホロヴィッツは二度来日していて、幸運にも私はその二度の来日コンサートを聴いている。一度は主治医だかの薬漬けでボロボロのNHKホール。そして二度目は祖国モスクワでのコンサートの帰りに寄った昭和女子大学人見記念講堂。この二度目のコンサートのアンコールの模様を隠し撮りした映像がYoutubeに残されている。まさに私がいた同じ空間の映像だ。HNにしているetincellesの演奏の後のトロイメライ。このシューマンを聴いているとき、あぁもうこれが最後なんだ。もう逢えないんだ。さぁもうお別れだよ、、と歌っているようにしか聴こえなくて溢れる涙が止まらなかったのを今でも覚えている。今はネットで色々と彼の演奏する姿が見れたりするけれど尚更偉大な巨匠であったのだと実感するね。そんな彼も実はウクライナ生まれなんだよ。


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