小さなピアノ

「あの…よかったらショパンノクターンを弾いて貰えないかしら?」
十数年前この病院の慰問コンサートで、とりあえずのプログラムを弾き終えた女の子に Op9-2 のノクターンを母はアンコールにリクエストしたそうだ。
私もチラリと見かけた事がある、待合室の片隅に設えた古ぼけたアップライトピアノの事だろう。
今は建て替えられて新しく立派になったエントランスロビーには黄色いセミグランドピアノが。その自動演奏を聴きながら、ふとあの頃を思い出す。
「お姉ちゃん、いっぺんあんたにこのピアノ弾かせたい言うてたわ…」
通夜の席で叔母に話しを聞かされて泪が溢れた。好きだからと携帯の着信音にまで設定してやった曲をあの時母はどんな想いで聴いていたんだろう。
同じ病院で今は私自身が入院生活。
なかなか思うようには結石も割れないようで、明日また2度目の破砕だなぁ…思っていたよりも何だか大層な感じで、人生初のストレッチャーに乗せられて院内を病室まで運ばれたり、点滴とお友達にガラガラ連れて歩いたり…いい体験させてもらっているよw

お母ちゃん守ってね。