湯巡り

おや、これは?と脚を浸け入れた浴槽の底には湯ノ花が沈殿している。
すくい上げてみるとさらさらと砂時計の砂粒のように解けて掌からこぼれ落ちた。
年季の入った木の浴槽の縁にあごを乗せて景色を眺めながら深く息をつく。
きっと秋は紅葉で美しい景色が窓一杯に広がるのだろう。けれど、今は枯れ木のそれにでも、たとえ雀とはいえ一羽何気にとまっている様でさへ何故か絵になる。あぁ、良い湯だ。

市街からちょっと山に分け入っただけでこれほど秘湯感のある温泉が有るとは思わなかった。
四国では珍しいという濁り湯の石鎚山温泉「歓喜庵」
誰も先客が居なかったので大きな浴槽を独り占め。さんざ楽しんで上がろうとした頃、地元の者らしい爺様が入って来たので後を譲る。

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松山に入る前にもう一軒
伊予の三湯の一つ本谷温泉へ。
古の天皇たちが湯治に訪れたという由緒ある温泉らしいけれど、今の施設は普通のスーパー銭湯のようにリニューアルされているので歴史を感じる事はない。4キロも先の源泉から湯を引いていると言うからお湯も温泉感が無い。温泉は劣化が早いから新鮮さが無くなるんだろうねぇ。もっとも源泉が有るところまで分け入れば、きっと鹿や猪しか入らないような温泉だろうけれど。まぁ歴史を知るにはいい勉強だよ。