春の嵐

男の部屋を出るといきなり激しい風が羽織ったばかりの白いシャツを翻し、私は思わず寒さに身震いした。
彼の敏感な乳首を舌先で跳ね上げながらも、慣れたウケの割には妙にキツく締め上げる秘孔に一層激しく注挿をくり返す最中にも、びゅーびゅーとまるで嵐のような風の音は男とまぐわっていたベッドの脇の窓から聞こえてはいたけれど、これ程まで吹きすさんでいるとは思わなかった。突風に煽られた小雨が冷たく顔に刺さる度に、彼の温もりの記憶が火照った身体から失われてゆく。
再び熊本への長い出張を終え、溜まったモノを吐き出すために掲示板の男と会った。相変わらずやっている事は毎週同じだ。けれど数打ちゃ時折面白い男と出会ったりもする。彼の指図通り深夜の神戸の街中に車を停めて待つと、暫くしてすらりと長身の髪の長い男が現れた。彼に連れられて招き入れられた部屋の生活感からあれこれと想像が膨らむ。
「それって、ギター?」
「うん。」
「フォークか?」
「ううん、クラシック。僕は演奏はダメなんだけどね。指揮者なんだ。」
さんざまぐわった後のベッドで、胸に抱きながらお互いの音楽観についてつい話し込んでしまう。
「指揮者なんて技術云々より、どれだけ人望が厚いかだからなぁ…」
「そう!けど、そこらへんが大変 (-"-;」

「ところで、なんで歳を上に云ってたの?下に誤魔化す人はいるけどさ(笑)」
「ん?邪魔くさいからさ。四捨五入で丁度に云っただけだよ」
「大体さ、年上好きだとかフケ専の子ってのは、上なら歳なんてどうでも良い事なんだよ。それをさもしいスケベ根性から少しでも若い子食いたいとか、フケ専じゃない若い子でも美味しそうなら食いたいとか、身勝手に妄想するのさ。
で、そういうイタいオヤジってのは大抵『歳より若く見えます』とか『何歳までならオッケーなの?』って恥ずかしい言葉を吐くんだ。」
「いるいる!そゆオッサン(笑)
でも、ウケは大変なんだよ。年取るほどにね…」
「けど、要らぬことはせんことだよ。男無しでは生きてゆけない訳じゃ有るまいし、整形で身体さわったり妙に鍛えてみたり不自然に自分を造るのは、見てくれの他に自分の魅力が無いって公言するようなもんさ。今は綺麗キレイでちやほやされるNHのおねえさんだって、余程根性座って仕事してる奴以外、いずれなれの果ては闇夜に蠢く小汚い妖精だぜ?」
「でもさぁ、やっぱ寂しい時ってあるやん?」
「だからって、男は寂しさ紛らすアイテムじゃないで? んなときに食いついた男なんて、大抵ババ掴みさ(笑)」
「そうかも(笑)    ねぇ、また逢ってくれるでしょ?」
「あぁ。またくるよ。」
コインパークに百円玉を入れながら、寒さに手が震えた。
春の嵐は何かの予兆か?  はてさて、吉と出るか凶と出るか…