明るいうちから呑む酒は

不意に休みの出来た木曜日。
暇を持てあまして久々に電車で街へ出る。出先で前に見かけて気になっていた電子ピアノを触ってみた。ふうむ…車買えるほどたいそうな値段のわりに、オモチャみたいな音がするんだね。アクションのタッチや音を限りなくコンサートグランドに…って、いったいどんな耳してんだ?ちゃらちゃら弾くポップならどうでも良いのかもしれないけれど、なんとも期待はずれ。これならまだ中古でも、自分の好みの音を出すアコースティックのアップライトでも探す方がましだよ。
平日の雑踏でさへあまり好きではないので、とっとと帰って、まだ明るいうちから駅近の鉄板焼き屋のカウンターに独り座る。とりあえずビールをあおっていると、他に客もいないので店員の若い男の子が
「今日はお休みなんですか?」と声をかけてくる。
「あぁ、不意にね。っていうか、この歳になると、たまにこうして明るいうちから呑んでるのが楽しくって嬉しくって仕方ないんだよ。」
「じゃぁ、暗くなるまでまだしばらくは楽しめますね?(笑)」
大阪のオッサンなんて、ちょっと弄われるといっくらでもしゃべり出すもんだから、いつの間にやら旧知の常連のオッサンかのように盛り上がる。
「俺、性格悪いから彼女なんて出来ないっすよ。」
なんていうけれど、何気にコテ捌きとか手つきを観ていたら、こいつきっとこの仕事が好きで好きで仕方ないんだなぁ、と思わせる。何だかこういうノンケの男の子を見てるとほっとするね。

「あゝ そろそろ暗くなってきたな。おっしゃ、帰るわ。」
「まいどぉ〜!またよろしく。」