祝婚歌

近くの本屋で文庫があったので、茨木のり子の『一本の茎の上に』を買い露天風呂に浸かりながら読む。彼女の感性から拾い集められたお話がおもしろい。
その中に吉野弘の『祝婚歌』のエピソードがあって、なるほど私も姪っ子の結婚の折りには披露してみようかなどと思わせるけれど、ただ、馬鹿の一つ覚えのように、いかな時にも引っ張り出す輩っていふのも癪に障る。
この祝婚歌の意味するところとは関係ない話だけれど、思い出したことがある。
昔、親友の結婚式に出席した時、さてどう祝ってやろうかと考えた末、私はギターの弾ける友人を誘って、耳コピで譜面を起こし、映画『Sound of Music』の中のエーデルワイスを歌った。
乙女なノンケの親友が好きな映画のワンシーンを再現するつもりでね。
さて、ギターの伴奏が始まった瞬間、彼はハッと気付いた顔をして、既に目を潤ませていた。トラップ大佐よろしく甘く私が歌い出す頃、彼は泣いていた。
ただ、ギターを弾いてくれた友人が、その風貌からどう見ても流しのオッサンにしか見えなかったのは、ここだけの話(笑)