明日天気になぁれ

「なんだ、帰るのか?」
「うん、明日またゴルフなんだ…」
つい2時間程前に私の部屋を訪れた恋人は、とんぼ返りするという。
こいつ、俺と話をつけるためだけにやって来たというのか…
「この一週間どうでした?」
「なんか云いたいことあります?」
青ざめた顔は、一見して、昨夜眠れなかったのだろう葛藤を物語っている。
けれど、凛として、いきなりそんな言葉で先制パンチを食らわすんだ。
おぃおぃ、オッサンしっかりしろよ。
彼の方がよっぽど大人じゃないか。
そりゃそうさ、蜜壺の蓋を閉じて男を拒めるのは、ウケの特権。
武器を取り上げられた丸腰の男なんて、吹けば飛ぶよな弱虫さ。
恋人のキスは、まだ力無いけれど、
沈黙の間のお互いの想いをぶつけ合う。
距離があるからこそ必要な言葉達が、堰を切って迸る。
こんな大切なことも忘れていたのか…
そして、2人の決め事を作った。
「もう、だんまりは無しだよ、いい?」
「そうだな、反則だな。」
もう、こんなことで、お前を泣かせはしないよ。
いつの間にか、お前は随分大人になったんだなぁ…
さぁ、来週からは忙しくなるぞ。稼がなくっちゃ。
お前ともっと楽しむためにね。
明日天気になるといいな…
安心しておやすみ。